当日。
最寄りの駅からタクシーに乗り、会場へ向かう。
どこかいつもよりも緊張していた。
しかも20名以上の参加者が楽しみに集まっていると・・・
事前に社内メンバー同士でアイマスクをしながら練習したが、不安が残っていた。
本当に見えなくてもネイルケアができるのだろうか。
そして時間となった。
「こんにちは!本日はお集まりいただき、ありがとうございます!・・・」
4人グループに分かれワークショップがはじまった。
まずは自身で爪やすりを使い爪の長さを整える。
「ななめにあてるのよ」「もうこれくらいでいいかな?」
「机にやすりを置いて、爪を動かすほうがやりやすいかも」
そんな会話をしながら、爪の長さが整った。
「次はシャイナーというもので、爪表面を磨きつるつるにしていきます」
「キュッキュッ・・・」
「すごい!!つるつる!」
「ほんとだ!」
「きれい?みて?」
どんどん爪と一緒にみんなの顔も輝いていく。
「あーすごい!ずっと触っちゃう」
そう、見えなくても感覚で楽しむことができる。新しいネイルの楽しみ方。
「次はネイルシールを貼っていきます!」
マニキュアを塗るのは少し難しいため、凹凸のあるネイルシールをたくさん用意した。
「自由に好きなところに貼ってください」
もうそのころには各々自由にシールをつるつるの爪の上に貼り始めていた。
「どうどう?かわいい?」
「私は薬指にだけ貼ろうかしら」「全部の指に貼っちゃった」
もうレクチャーする隙間もなく、自由にネイルと会話を楽しんでいた。
「目が見えなくてもおしゃれできる」
「ネイルは人の心を明るくする」
「楽しい会話が生まれる」
その光景を目の当たりにした瞬間だった。
その後も楽しい時間は続き、後片付けを始めようとした時、
ある60代くらいの女性がこう言われた。
「今日、旦那とデートにいこうかしら」
・・・・
主催者の方にこのイベントの相談をいただいたときに言われたことを思い出した。
「視覚障がい者になるとそれを受け止めたくない人も多く、外出もしなくなる方が多い。
イベントをきっかけにでも外に出る機会を作ってあげたい。」
ネイルはおしゃれだけでなく、自分に自信を持ち、外にも出たくなるきっかけになるのではないか。
その後もワークショップを開催したが、毎回みんな笑顔になり、楽しい会話をしながら帰っていった。
ネイルには見えないパワーがあると確信した出来事だった。