爪ドットコムでは、被災地でネイルを通じたボランティアを続ける中村さんの活動に注目しています。
避難所でのケア、会話の時間、そして「また明日を迎える力」につながる小さな支え。
石川県での活動を中心に、これまでの歩みと、今伝えたい思いを伺いました。
目次
- プロフィール
- 東日本大震災を境に見えた「自分の役割」
- 能登半島地震で見た地元の変化
- 被災地でネイルを届ける理由
- 今後の予定
- 中村さんの想い
プロフィール
— まずは自己紹介をお願いします。
中村さん:富山県高岡市の出身です。
父が転勤族だったので、子どものころは2〜3年ごとに全国いろいろな場所に住んでいました。
現在は日本保健福祉ネイリスト協会
の福祉ネイリストとして、
マルシェや出張施術などを中心に活動しています。
東日本大震災を境に見えた「自分の役割」
— 東日本大震災のとき、どのような経験をされたのでしょうか。
中村さん:2011年、宮城県内の高校に通っていて、被災し避難所で生活しました。
地元の富山に戻った後、「なぜ自分だけが生き延びてしまったのか」「宮城を置いて逃げてしまった」
といった後悔がずっと残りました。
— その後、再び宮城へ?
中村さん:20歳ごろから、宮城県に戻りボランティアをしたいという気持ちが強くなり、
宮城に戻り、七ヶ浜町ボランティアセンターで活動を始めました。
最初は掃除やパソコン教室、音楽を楽しむレクリエーションなど、できることを手伝っていました。
能登半島地震で見た地元の変化
— そして、2024年の能登半島地震。中村さんにとっては、地元への思いと重なる災害でしたね。
中村さん:私の住んでいた場所は数日の断水程度で済みましたが、
被災地でネイルを届ける理由
— 災害支援というと力仕事のイメージが強いですが、そこからネイルにつながった経緯は?
中村さん:災害ボランティア団体のリーダーと出会い、
「女の人でもできることはある」と声をかけてもらったのがきっかけです。
実際には、ブロック解体や家財出し、清掃、輪島のお箸工場の選別、能登町のお店の外壁改修など、
現場でがっつり動くことも多くて…後から自分が体育会系だったと知りました(笑)。
— 避難所でのネイル支援は、どのように始まったのですか。
中村さん:真夏の作業で体調を崩す方もいて、女性の作業に心配の声も上がる中、
ボランティア リーダーから「しほは避難所でネイルしておいで!」と背中を押してもらいました。
その言葉で、石川県七尾市の矢田郷地区コミュニティセンター
へ向かいました。
— 初めて伺った当時の状況を教えてください。
中村さん:矢田郷のコミュニティセンターは避難所でした。
夏でも水は出ず、仮設トイレを使用。お風呂は自衛隊や近所のプールへ歩いて向かう状態。
まずは爪切りや爪磨きから始め、定期的にネイルケアを行いました。
共住スペースには入れず廊下での施術、エアコンがほとんど効かない中、大型扇風機を頼りに。
それでも皆さんが並んで待ってくださって…。
— どんな声が届きましたか。
中村さん:「避難所での楽しみがないから、うれしい」
「ネイルの時に話を聞いてもらえるのがうれしい」
「被災したことを誰に話したらいいか困っていた」
「避難所で他の人と話す機会がなくて、こうしたイベントでおしゃべりできて安心した」
といったお声をいただいています。
——ネイルは“きれいになる”だけでなく、会話のきっかけであり、心の置き場なんだと改めて感じました。
— そして、活動は七尾市以外にも広がっていますね。
中村さん:はい。内灘町
や羽咋市
のボランティアイベントにも参加しています。
奥能登の大きな被害はもちろん、金沢に近い能登の地域でも、被災後の生活に苦労されている方が大勢います。
今後の予定
— 次の参加イベントについて教えてください。
中村さん:年内は2つのイベントに参加を予定しています。
マニキュアでのネイルカラーとハンドマッサージを行います。
地域の皆様、ボランティアの皆様、そしてご来場いただくすべての方々と、
心安らぐひとときを過ごせるようにと準備しています。
県内外から能登を訪れるきっかけにもなればと思っています。
・11/1(土) BIRTH福島in能登
@石川県 内灘町文化会館 大ホールフロア
・11/2(日) Kotonoha Live
@石川県七尾市 山の寺 妙圀寺
https://x.com/kaiunn_ksj/status/1971863730947609003
能登は、美味しい海鮮・美しい自然・ほかほかの温泉・人の温かさで溢れています。
ぜひ足を運んでみてください。
現地で過ごす時間が、復興を支える力になります。
中村さんの想い
— 最後に、中村さんの想いをお聞かせください。
震災から一年半が経った今も、県内外から多くの方が足を運び、復興のための作業を続けていらっしゃいます。
中には、自費でボランティア活動を続けておられる仲間の姿もあります。
私自身もその姿に胸を打たれ、現地の空気を肌で感じ、
伝えていくことをこれからも続けていきたいと思っています。
住まいやライフラインを元に戻すことは、物理的な復興。
そして、そこに関わる多くの方々は現在も懸命に頑張っていらっしゃいます。
わたしは、「ネイル」という形で支援ができる。
昨年の夏から自分にできることを、長く続けていくと決めました。
私がさせていただいているネイルケアは、単に爪や手をきれいに整えることだけではなく、
手に触れ、お話をしながら、少しでも心が和む時間をお届けできたらと思っています。
編集後記
災害の只中で「きれいになること」を後回しにしがちな状況で、
ネイルは「自分らしさ」を取り戻す小さな灯りになる——
中村さんの言葉から、支援の意味を改めて考えさせられました。
現地でのネイルを通したボランティアやイベント情報は、随時ご紹介していきます。
中村さんの日々の様子やより詳しい内容は、Instagramでもご覧いただけます。
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