「爪に何かを塗ると、呼吸ができなくて苦しい」
いや、実際に苦しい思いをしたわけではない…でも、誰もが一度はそう感じたり、考えたりしたことがあるのではないでしょうか。
ではなぜ多くの人がそう思うのでしょう。爪は本当に呼吸をしているのか、なぜ苦しく感じるのか、きちんと解明していきましょう。
1.爪の成分と構造を知っておく
爪は皮膚とつながっているので「同じ性質」と思われがちです。もちろん、爪は皮膚の付属器官で同じケラチン(カルシウムではありません、タンパク質です)でできています。が、大きく違う性質があります。
皮膚→常に角質層が剥がれ落ち、新陳代謝を繰り返す
爪→爪の根本深くから指先に向かって角質を積み重ね、硬い爪を作る
という点。
つまり、爪は〝角質の塊〟!そう、呼吸はしていません!水分や油分などの栄養を蓄えておくことができず逃げていくだけ、放っておくとどんどん乾燥していく…。さらに、表面が剥がれ落ちるわけではないので、指先に向かって伸び放題。カットする必要があるのです。この性質は髪の毛と同じです。
2.呼吸をしていると勘違いしてしまうワケ
では、どうしてこれほどまでに「爪は呼吸をしている」と思われるのでしょう?
それは、「皮膚呼吸という言葉がある」のと、ポリッシュやジェルを塗ったときに「重たく感じる」からだと思われます。
爪は皮膚の一部ですが、異なる性質なので呼吸をしていないのは前述のとおり。
そして、何も塗っていない爪は水分や油分が逃げていく…そこでポリッシュやジェルの登場です。ポリッシュやジェルを塗り「蓋」をすることで水分や油分が閉じ込められ、平たい爪が立体的に巻いたり、硬さを感じたりすることで、締め付けられるような圧力を感じることがあります。これは顔や手肌を化粧水やクリームで保湿するとふっくらし、ギュッと密度を感じるのと同じです。また、ジェルの場合は「体積収縮」し、とくに爪を巻き込む性質があり、さらに指先に締め付けを感じやすい人も。それによって「重たい」印象が残るのかもしれません。
3.正しい考え方は
呼吸できない〝角質の塊〟である爪には「水分」「蓋」「油分」が必要。
まずは「水分」を含ませるネイルケア。ドライケアではなく、フィンガーボウルなどを使用したウォーターケアがおすすめですが、できない場合は化粧水で指先から爪表面まで全体を保湿するだけでも大丈夫です。すでにポリッシュやジェルを塗っていても、爪周りや爪先から浸透しますので怠らずに。
ケア直後はポリッシュやジェルで「蓋」をし、乾いたら(固まったら)キューティクルオイルやハンドクリームなど「油分」でコーティング、保湿します。なお、油分を塗った後にポリッシュやジェルを塗ると剝がれやすいので注意してください。
ポリッシュを塗ることができない場合はベースコートだけでも、それも難しければこまめに油分でコーティングしましょう。
爪は、自力では何もできない、呼吸すらしていないデリケートな部分。毎日いたわりながら、健やかで清潔に保つことを心がけてみてください。
NPO法人日本ネイリスト協会常任本部認定講師・マスターエデュケーター
山田 佳奈