お仕事 「ネイル=おしゃれ」だけじゃない。日本ケアネイル協会が広げる、爪ケアの新しい可能性

「爪が厚くなって、靴を履くたびに痛い」「巻き爪がひどくて、歩くのがつらい」——こうした爪のトラブルを抱えながら、「これくらい我慢すればいい」と、そのままにしている方は少なくありません。また、高齢のご家族が爪の状態を気にしながらも、どこに相談すればよいかわからず困っているという方もいらっしゃるかもしれません。

 

「ネイル=若い女性のおしゃれ」というイメージは今も根強く残っていますが、実は爪のトラブルは老若男女を問わず、誰の身にも起こり得る日常的な問題です。本記事では、医療的な知見に基づく爪のケアを普及させるために活動する「一般社団法人 日本ケアネイル協会」へのインタビューをもとに、私たちが爪について知っておきたいことをお伝えします。

「おしゃれなネイル」の陰で、見えていなかった爪の課題

ここ数年、ネイルアート市場は急速に成長し、技術も商材もめまぐるしく進化してきました。その一方で、見落とされてきた課題があります。疾病や高齢化によって弱くなった爪、トラブルを抱えた爪に対して、医療的な知見に基づいた専門的なケアを提供できる人材が、圧倒的に不足していたのです。

 

爪が厚く硬くなって歩行のたびに痛みが出る高齢の男性、デスクワークや家事でささくれや巻き爪に悩む働き盛りのビジネスパーソン、成長期の足爪が引っかかって歩きづらくなっている子ども——こうした方々が必要としているのは、カラーやアートを楽しむための「おしゃれなネイル」ではありません。痛みを取り除き、快適な日常生活を取り戻すための、「健康を守る爪のケア」です。

 

こうした現実に向き合い、2022年6月に設立されたのが日本ケアネイル協会です。

「ケアネイル」とは何か。普通のネイルサービスとどう違うの?

協会が普及を目指す「ケアネイル」とは、装飾やファッション目的を超えた、爪の健康維持と快適な日常生活を支えるための「予防的・再発予防的ケア」のことです。

 

一般的なネイルサービスとの最大の違いは、施術者に求められる知識とスキルの幅にあります。ケアネイリストには、解剖生理学や衛生管理、感染予防といった医学的知識が必須です。高齢者や要介護者への施術では、皮膚・爪疾患への理解をもとに保湿ややすり掛け時の力加減を厳密にコントロールし、足裏の皮膚硬化防止や転倒リスクを下げるフットケア技術も求められます。

 

認知症の方へのケアでは、刺激過多を避けた声かけや適切なタッチングケアで安心感を生み出すことが大切です。糖尿病などの基礎疾患を抱える方には、傷の早期発見・報告とホームケア指導が欠かせません。術後患者や小児には、痛みや不安の軽減を最優先にしたやさしいコミュニケーションが重要になります。

 

「美の提供者」から「健康と生活の質を支えるプロフェッショナル」へ——ケアネイリストはそういった役割を担う存在です。

 

医療現場と連携する、新しいケアの仕組みづくり

協会が現在進めているのは、ケアネイルを医療・福祉の現場に根付かせるための本格的な仕組みづくりです。

 

将来的には医師や看護師と協働し、病棟や外来で爪の変形・痛み・変色に悩む方々に対して、抗菌・低刺激の専用素材と徹底した衛生管理のもと、予防的かつサポート的な施術を提供できる体制を整えていく予定です。自治体や医療機関と共同での啓発セミナーも行い、全国の医療・福祉施設とのネットワーク構築にも取り組んでいます。

こうした取り組みを支えるのが「ケアネイリスト」資格制度です。受講生は解剖生理学や皮膚の基礎知識を学ぶ理論研修に加え、院内実習を見据えた実技研修で施術スキルを習得します。定期的なフォローアップ研修を通じて、最新のエビデンスや技術を継続的にアップデートしていく仕組みが用意されています。


▲ケアネイリスト資格テキスト

「専門家が近くにいる」という安心感が、爪のトラブルを抱えるすべての方にとっての心強い支えになるような、そんな社会の実現を見据えています。

ネイリストの未来も広げる、ケアネイルという新しいキャリア

ケアネイルの普及は、ネイリスト自身の働き方にも大きな変化をもたらします。

 

まず職能範囲の拡大です。老若男女、術後患者など幅広い層の爪トラブルに対応できる知識を得ることで、サロン内外にとどまらず、訪問介護・医療機関・福祉施設など施術の場が大きく広がります。

 

次に職業寿命の延伸です。ファッション性ではなく爪の健康維持を主眼とする技術は、流行や年齢に左右されません。キャリアを積んだネイリストが、長期にわたって第一線で活躍し続けることができます。

 

そして職業価値の向上です。医師・看護師との連携によって「爪の専門家」としての信頼性が増し、解剖生理や衛生管理の知識を活かした高付加価値メニューの提供も可能になります。ネイリストという職業が、より社会的に重要な役割を担う存在として認められていく——そんな未来が、ケアネイルによって切り拓かれようとしています。

協会からのメッセージ

「経験豊富な『爪の専門家』を育成し、医療・介護現場で医師や看護師と連携して、爪の健康維持と生活の質向上を支える新たなプロフェッショナル領域を切り拓いてまいります。」

 

— 一般社団法人 日本ケアネイル協会

 

まとめ

-爪のトラブルは老若男女を問わず誰にでも起こり得る問題であり、医療的な専門ケアの担い手が不足していた

 

  • 「ケアネイル」は装飾を超えた、爪の健康維持と日常生活の質向上を支える予防的・再発予防的ケア
  • ケアネイリストには解剖生理学・感染予防・コミュニケーション技術など、通常のネイリストを超えた専門知識が求められる
  • 日本ケアネイル協会は医師・看護師との連携や認定資格制度を通じて、医療・福祉現場へのケアネイル普及を推進
  • ケアネイルはネイリストの活躍の場を大きく広げ、職業としての価値向上にもつながる

TATより編集コメント

今回のインタビューを通じて、「ネイル=おしゃれ」という枠を超えた、爪ケアの新しい可能性を知ることができました。

 

TATはネイル用品のサプライヤーとして、多くのネイリストやサロン経営者の方々と向き合ってきました。だからこそ、日本ケアネイル協会が切り拓こうとしている「医療・介護の現場で活躍するネイリスト」という新しい職業像には、大きな共感と期待を感じています。

 

爪のトラブルを抱えながら我慢している方、高齢のご家族の爪のケアに困っている方、またケアネイルというキャリアに関心を持つネイリストの方にも、ぜひ本記事が届けばと願っています。

 

引き続き、ネイルに関するさまざまな情報をお届けしてまいります。

【取材協力】

一般社団法人日本ケアネイル協会
理事:鍵井 輝子さん

【公式ウェブサイトはこちら】

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