ライフスタイル ネイルが結ぶもの―Lienje、再生のストーリー(後編)

 

続けることが困難になってしまったサロンをもう一度立ち上げる


――それは容易いことではありませんでした。
しかし、さまざまな困難のなか、櫻井さんは「ネイルで地域を笑顔にしたい」という信念を持ち続けます。

後編では、サロン再建の道のり、震災で得た学びと、未来への力強いメッセージを伺います。

(前編はこちら

 

目次

  • 地域・支援との出会い
  • サロン再建への取り組みと工夫
  • 新たな防災意識と価値観
  • 現在のサロンとこれから
  • 同じ境遇へのエールとまとめ

 

 

地域・支援との出会い

Q:地震を経験され、サロンや地域との関わりについて考え方や意識に変化はありましたか?

 
A:能登半島はもともと過疎化が進む地域でネイルに対してまだまだ偏見があります。
初めてネイル支援に行ったときは、
避難所の方に少しでも自分だけの時間をもって欲しい、
張りつめた日常のなか、わずかな時間でもリラックスしていただきたい と、
ネイルよりケアを中心とした道具を持って行きました。

しかし避難所に行くと、ネイルサンプルに目をキラキラさせて施術をさせてくださいました。
そしてその方が同じ避難所の方を誘い、だんだんと輪が大きくなり
毎月行く度に『待ってたよー!』と出迎えていただけるようになりました。

想像以上に喜んでいただけて、ネイルの持つ力はすごいと誇りを感じるようになりました。
 
 ――大変な状況だからこそ、指先から生まれる小さな喜びやつながりを、
   皆さん心から求めていたのかもしれません。
   櫻井さんの活動が、地域の方々の生活や心の支えとなっていることを強く感じました。
 
 
 
 

新たな防災意識と価値観

Q:災害への備えとして、今後どのような取り組みをお考えでしょうか?

A:まずは命が助かることが一番です。

その後、避難所なのか自宅に戻れるのかでも備えは違ってきます。

私たち家族は2週間ほど避難所であった小学校に避難していました。
その間自衛隊などによる支援物資の支給や炊き出しがありましたが、
自宅避難の人達は、最初は水も炊き出しも貰えないと聞きました。
元旦の災害ということもあり普段の人口より多くの方が避難所に避難しており
備蓄が足りないという状況もありました。
普段からの備蓄がとても大切だと痛感しました。


今回自宅では100日間水道が使えなかったので、家の雨樋を切って雨水を溜め、
それを水槽用の濾過スポンジを使って濾過し、洗濯やトイレに使うなど工夫をしていました。

この経験から、下記のことに気を付けて過ごしています

  • 震災後は車の中にも災害バックを置く
  • 小さめな地震でも次に大きい地震がくるかもしれないので、玄関の物が落ちて来ない場所で待機する
  • 地震がきたら、玄関はできたら開けておく
  • ベッドの頭上には、頭に付ける電灯を置いておく
  • 自宅に戻れることを想定し、バケツ数個や水タンクを用意する
  • 自宅近くに湧き水や山水が流れる場所がないか確認しておく(井戸水なども) 

    ※自宅前の川は数週間濁っており使える状況ではなかったです。

     
 
――実際に被災されたご経験から生まれた、リアルで具体的な備えの工夫はとても参考になります。
  災害時には「まず命を守ること」が最優先であること、
  状況に応じて臨機応変な対応が必要であることが伝わってきました。
  日常のちょっとした備えや、自分の行動範囲に合わせた準備の大切さを、改めて考えさせられます。
 
 

現在のサロンとこれから

Q:現在のサロンの状況について教えてください。

A:現在は自宅横の敷地に物置(倉庫)を建てサロンにしてます。
 
 ――大変な状況の中でも、工夫を凝らしてサロンを再開された行動力に心を打たれます。
   
 

Q:今後のサロンの展望や目標について、お聞かせいただけますでしょうか?

A:奥能登には元々ネイルサロンが少なく、震災で能登を離れてしまったネイリストさんも多く
ほとんどのネイルサロンが無くなったと聞いています。

私自身も40代となり今後のサロン継続について考えることが多くなりました。

能登でネイリストを目指す方が増え、
能登でもネイルができるんだと思っていただけるような取り組みができたらと思っています。

 
 ――「能登にも素敵なネイリストがいる」という声が広がり、
   能登のみなさんの笑顔の輪が広がること、また、たくさんの方が能登を訪れる未来がとても楽しみです。
   今後のご活躍を心より応援しています。
 
 
 

同じ境遇の方々へのエール

Q:同じく災害に直面された方々への励ましの言葉や、
 地域やお客様へのメッセージなどがあればお聞かせください。

A:ネイル支援を通して、本当に多くの方々とつながることができました。
いつもサポートしてくださったボランティア団体のみなさん、
遠く能登まで駆けつけて一緒に活動してくれたネイリストの方々、
同じ被災者として励まし合った能登のネイリスト仲間、
いつも笑顔で迎えてくださった避難所のみなさん―。
ここでは書ききれないほど多くの方の支えがありました。
ネイル支援といいつつ、救われていたのはむしろ私自身だったのだと感じています。
本当にありがとうございました。

今もなお、災害によって多くの方が苦しんでいることと思います。
今は前を向くことができなくても、
周りを見て、自分だけが取り残されたような孤独を感じていたとしても、
必ずまた前を向ける日が来ると信じています。
たとえそれが小さな一歩でも、踏み出せる日が訪れることを心から願っています。

これからも、ネイルが心を癒し、明日を生きる力になることを伝え続けていきたいと思います。
 
 
 

まとめと編集後記

今回のお話を通じて、
サロン経営に限らず、どんな人にも明日へ進むためのヒントがあると感じました。
櫻井さんの姿が、ひとりでも多くの方の心に届けば幸いです。

 

Lienje 櫻井さんの日々の様子やより詳しい内容は、Instagramでもご覧いただけます。
 サロンInstagramはこちら

【シリーズ内リンク】

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